住宅宿泊事業法施行を祝う会で石破茂氏が伝えたこと

住宅宿泊事業法施行を祝う会

住宅宿泊事業法施行を祝う会が6月15日、東京の都道府県会館1階大会議室にて地方創生宿泊施設推進実行委員会の主催で開催されました。

祝う会を主催した地方創生宿泊施設推進実行委員会は、民泊事業者団体の「全国民泊同業組合連合会(jasmin)」、民泊管理者団体の「全国賃貸管理ビジネス協会(全管協)」、民泊含む宿泊業界広報団体の「財団法人宿泊施設活性化機構(JALF)」によって構成されています。

同日の会の主旨は「新法施行日に際し、新法に基づく『民泊』の健全な発展、定着・普及を目指し、今後の取組みについて確認し、関係者で活動方針の決議を行うもの」でした。そして具体的に「1.日本各地でのインバウンドの受容促進による地方創生、地域発展を目指すこと」「2. 新法に基づく『民泊』の健全な発展、定着・普及を目指すこと」「3.地域社会への悪影響を及ぼしている『ヤミ民泊』を撲滅すること」「併せて、各地方自治体の条例による過度の規制・縛りの撤回を要望していくこと」という方針に基づき、会が行われました。

会は「開会の挨拶」「政官業より法律制定までの道のり、民泊新法の本旨と今後について」「シンポジウム」「基調講演」「地方創生宿泊施設推進決議採択」「閉会」という流れで進み、当日は政官業をはじめとして各分野から集まった登壇者が講演しました。ここでは「法律制定までの道のり」の項目のなかで、政界から内閣府代表として元地方創生大臣の石破茂衆議院議員が行った講演をピックアップして、お届けします。

民泊をいかにして伸ばしていくか

住宅宿泊事業法施行を祝う会 石破茂氏

まず、石破氏は、冒頭で「今日施行ということに相成りました。これをいかにして伸ばしていくかということを我々は考えていかねばならないので、法律(住宅宿泊事業法)ができたからそれでおしまいというわけには全然なりません。」「この法律がいかにして国益に資するものになるか。宿泊ゲスト、宿泊事業を営む方、地域の方にとって、雇用、所得、満足感、それを与えるものになるか、それを妨げているものがあるとすれば、いったいそれはいかなる理由に基づくものであるか、それをきちんと検証し、対応していかねばならない」と考えを述べ「(2020年までに)4000万人のお客様を迎える」にあたっては「(4000万人の受け入れ先が)全然足りない」と話しました。

続いて、観光産業に従事する人は「観光は輸出産業である、インバウンドは輸出産業であると意識を変えなければならない。いかにして外貨を稼ぐか」ということを考える必要があり、かつて人口が増えていた時代は「よりよいものをより安く」という価値感で問題なかったが、これから結婚人口減と高齢化で人口減を迎える中、「よりよいものをより付加価値をつけて」という価値観でやっていく必要があると述べました。そして、観光において重要なのは、石破氏がデービッド・アトキンソン氏(2016年より三田証券株式会社の社外取締役、2017年6月より日本政府観光局の特別顧問)から教わったという「今だけ、ここだけ、あなただけ」というものがどれだけ提供できるかにあると話しました。

その後、日本のサービス業の生産性について、生産性とは付加価値だとしたうえで、日本はアメリカの3分の1しか生産性がないと指摘しました。それと同時に「そこに伸びしろがある」のであって、それを伸ばす「切り札の一つが、間違いなく民泊」であると話しました。例えば、ホテル・旅館でチェックインは14時、チェックアウトは翌日の10時のようなサービスがあったとき、旅行者が海外から日本に朝早く到着した場合、チェックインは14時ですと言われるサービスが果たしていいサービスなのだろうかということに考えを巡らせなければならず、その点について民泊は柔軟に対応できる可能性があり、「今だけ、ここだけ、あなただけ」というのを実現するのに「ものすごく力を持っている」、そのような思いで民泊新法を作ったと述べました。

民泊に反対する業界ともいかに共存共栄を図っていくか

そして、石破氏は、新法制定後の状況について以下のように話しました。

「規制があまりに厳しくて、何のための新法だったのよということであってはなりません。」
「実際は、ものすごく厳しい規制があって、自治体によってはまったく営業できないところもある。」
「反対される業界があることももちろん承知している。」「対立する関係ではなくて、いかに共存共栄を図っていくか、ということを考えていかなければなりません。」
「民泊だけが栄えるということはないのであって、例えば全日空さんがやっているように民泊と飛行機のチケット、これをどうやって組み合わせるか、というようないろんな分野との連携も必要。」
「必要な規制はしていかなければならないが、過度な規制があってはならない。」そして自治体ごとの規制の内容を把握したうえで「行政は適切な対応をしていかねばならない。」
「民泊というものがうまくいったねという形にしたい。」

このように、民泊新法施行に伴う各自治体の条例による規制については過度な規制であってはならず、日本国内の各分野において民泊が受け入れられる土壌が形成され、拡大していくことに期待する言葉が並んでいました。

住宅宿泊事業法施行を祝う会の様子

住宅宿泊事業法施行を祝う会の様子

民泊が広がるには地域住民の理解が必要

石破氏は続いて、民泊の展望に話題を移しました。まず、石破氏は、東京や大阪は現状「ほとんど泊まれない、空いてる部屋がない」と認識しており、なかでも「東京の魅力」については「下町」にみられるような民泊にこそあるのではないか、民泊の魅力はそこで「人とのふれあいがあり」「日本人の心がわかる」ということにあると話しました。そして、そのような民泊を広げていくために、かねて民泊で問題となってきた騒音やゴミ、治安の悪化などについて、そうならないようにどのように進めていくか、本人確認、厳重な管理、地域住民に悪い印象を与えないような努力、理解してもらう努力が必要だと述べました。

さらに今後、日本は生産性を上げないまま人口が減るというよくないパターンに入らないよう「多様な価値観を反映して、それを活かし、多品種のサービスを提供する」ようにしなければならないとあらためて示し、石破氏自身はGDP至上論者ではないとしたうえで「GDPを上げていかないと(医療、介護、年金などの)社会保障は維持」できず、GDPの上昇は「国家を守っていくためには絶対に必要なこと」である、そしてGDPの上昇に「民泊が果たす役割というのは極めて大きい」という見解を述べました。

最後に、石破氏は、新聞各紙も民泊はこれから先が厳しいという論調で、登録者が伸びていない現状にある中で、民泊の普及に向けて「昨今の行政において必要なのはKPIとPDCAサイクルをいかに回すかということ」にあるとして「皆様方と連携をしながら、困っている人はいないか、不当に困難な立場に置かれている人はいないかということをみながら、この民泊新法というものが、日本のために、そして人々のために大きく寄与するようにこれから先も努力をしてまいりたいと思います。」と締めくくりました。

まとめ

石破氏は、国家として民泊が非常に重要であること、民泊の拡大に期待しており、その拡大に向けて動く必要があることなどを冷静に話していました。住宅宿泊事業法施行直後であり、住宅宿泊事業者の登録数はまだまだ少ない現状にあるなか、どのように民泊が多様な宿泊ニーズを満たす受け皿として浸透していくか、引き続き注目です。

(MINPAKU.Biz編集部)