民泊サービスの規制改革に関する公開ディスカッションが開催。推進派と慎重派で議論

内閣府規制改革会議は3月14日、「民泊サービスにおける規制改革」についての公開ディスカッションを開催した。同会議は内閣府の規制改革会議委員および関係省庁、関係団体や事業者らが民泊サービスにおける規制改革について意見交換を行うもので、規制に関する結論を出すのではなく、現状の論点整理を目的としている。

ディスカッションには全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)、一般社団法人日本ホテル協会ら民泊の規制強化を求める旅館・ホテル関係者と、民泊仲介サイト世界最大手、Airbnbの日本法人、Airbnb Japanをはじめ、民泊特区の大田区で日本初となる民泊許認可を取得した株式会社百戦錬磨、そしてシェアリングエコノミーを推進する一般社団法人新経済連盟ら、民泊規制緩和・推進派が参加し、議論を戦わせた。

当日は、事務局よりこれまでの経緯、厚労省より「民泊サービスのあり方に関する検討会」の検討状況について説明があった後、各団体が自身としての民泊サービスに対する見解および政府への要請を10分程度で述べ、その後に公開ディスカッションという形式で行われた。民泊サービスにおける規制をめぐっては、旅館・ホテルら民泊サービスの普及により影響を受ける可能性がある慎重派と、Airbnb Japanをはじめとして民泊推進派との間で大きく意見が割れる形となった。

約15,000件の組合員を抱える日本最大規模の旅館団体、全旅連の北原氏は、旅館業法を遵守して営業をしている旅館との競争の公平性の観点から民泊の規制強化を訴えた。同氏は、30室規模の旅館でも法令を遵守した設備維持コストに年間1,000万はかかるなどと説明したうえで、イコールフッティング(商品・サービスの販売において、双方が対等の立場で競争が行えるよう基盤や条件を同一に整えること)を求めた。また、具体的に民泊に必要な規定として「訪日外国人観光客のみを対処とすること」「不在ホストの禁止」「1物件につき年間最大営業日は30日までとすること」「罰則規定の制定」などを提示した。

また、日本ホテル協会は、民泊では不特定多数の宿泊客がガスなどを使用できるため火災発生確率が高まる点、マンションなどでは火災や地震発生時に適切な避難誘導ができない点、加えて近隣住民には騒音やゴミ投棄などでトラブルが起こる可能性がある点などに言及し、民泊サービスの規制においては「宿泊者、利用者の安心・安全、公衆衛生の確保」「近隣住民の日常生活に不安や不満が生じないようにすること」の2点が重要だと訴えた。

一方で、Airbnb Japanの代表を務める田邊氏は、民泊に対する懸念として挙がることが多い安全面については、オンラインID認証、ソーシャルメディアとの連携、クレジットカード、パスポート認証、IPアドレスなど様々な施策により登録者の情報はかなり把握できており、ホームシェアリングにおいて重要となる相互レビューという仕組みもゲストが宿泊先で問題を起こす抑止力になると説明した。また、ホームシェアリングという新しいサービスを、まだインターネットもP2P(Peer to Peer)サービスもなかった70年前の時代に作られた法律の枠組みで扱うことには無理があるとしたうえで、ホストがゲストを断る権利は旅館業法の引受義務違反にあたり刑事罰を受ける可能性があること、都市計画法の用途地域制限により、自分の家が住居専用地域内にある場合、シェアすることができない点などを解消すべき矛盾点として挙げた。

さらに、Airbnb Japanは当日、日本独自の事情を踏まえて、新たに4つのサービスを展開予定であることを公表した。具体的には、警察との連携強化に向けて日本語対応可能な警察との窓口を設けたほか、公共機関からの災害情報や感染症情報をタイムリーに流す仕組み、パリで大きく成果を上げた税金の代行回収サービス、そしてグローバル全体で近隣の人々からのクレームやコメントを聞き入れる苦情窓口の設置を行うと説明した。

続いて、民泊特区となった大田区で日本初となる民泊物件の許認可を取得した株式会社百戦錬磨の上山氏は、現行制度のおける許認可取得のハードルの高さもあり日本では違法な「ヤミ民泊」が蔓延している現状に触れた上で、健全な民泊市場の発展に向けて必要な要素として現行法の遵守によるヤミ民泊の撲滅、そして観光立国に向けた規制改革の両輪が重要だと訴えた。

そして新経済連盟の井上氏は、ホームシェアリングによりインバウンド消費を含めて合計10兆円台の経済効果が見込める点、地方創生に貢献できる点、全国に820万戸あり、2033年には2000万戸まで増えると予想されている空き家の有効活用という観点からもホームシェアリングを推進すべきだと主張した。新経済連盟によると、現在の空き家820万戸のうち、ホームシェアに活用しうる空き家は約391万戸あり、その約30%が実際に活用されるとしても約120万戸の空き家が減少するという。

これら各団体の意見を踏まえたうえで、会議の後半には大学教授ら専門家らも含めてフリーディスカッションが行われ、各団体が活発に意見を交換した。議論の中では、民泊サービスが引き起こす外部不経済の問題をどのように対応するか、民泊ホストだけではなく、仲介者であるプラットフォーマーの責任はどうするのか、テロ対策について、ゲストとホストの情報の非対称性についてなどが議題に上がったほか、宿泊施設のタイプに応じた規制緩和の方針についても話し合われた。

最終的に、河野内閣府特命担当大臣は「新しいサービスを古い規定によって判断するのは難しい」としたうえで、旅館業法がホテルや旅館を悪く縛っているのであれば、それをどうすればなくせるのかという議論は別で必要だとの見解を示した。また、プラットフォーマーはただつないでいるだけ、ではなくもっと中心的に役割を発揮すべきだとの考えも示した。

今回の内容も踏まえ、規制改革会議は6月に予定している答申の中で民泊サービスの規制に関する方向性を打ち出す予定だ。なお、現在同時並行で観光庁と厚生労働省が進めている「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」が3月中に予定している中間とりまとめの内容については答申に反映させず、あくまで規制改革会議が独自に検討を進め、答申を作成するという。

民泊の規制をめぐっては、旅館・ホテル業、地方自治体、地域住民、マンションの管理組合、不動産事業者、シェアリングエコノミー事業者など様々なステークホルダーの思惑が錯綜しており、機会とリスクの双方の観点から説得力のある主張が展開されている。また、規制改革会議と観光庁と厚生労働省による検討会という2つの組織が同時に規制の検討を進行させている点も、今後の日本全体としての方向性を分かりづらくしている面は否めない。

既存のルールやものさしでは測りきれないサービスが出てきたとき、摩擦が生じるのは当然ことだ。既存の事業者との公平性を担保しながら、いかにシェアリングエコノミーという新たな経済の仕組みを上手く取り入れ、観光振興や地方創生、そして日本経済全体の活性化につなげていくのか、政府には難しいかじ取りが迫られているが、ぜひ前向きな方針の策定を期待したいところだ。

なお、公開ディスカッション当日の様子および資料については下記から参照可能なので、より詳細を知りたい方はぜひ確認して頂きたい。

【参照サイト】内閣府HP「公開ディスカッション(テーマ:民泊サービスにおける規制改革)」
【参照サイト】ニコニコ生放送「規制改革会議 公開ディスカッション【民泊サービスにおける規制改革】」

(MINPAKU.Biz ニュース編集部)

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